当社は1978年の創業以来、エネルギー効率に優れた1ステップ成形機の開発に取り組んできており、⾃然豊かな⻑野県⼩諸発のグローバルメーカーとして、気候変動問題は最も優先して取り組むべき社会課題であると認識しています。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、ASBは気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同し、積極的に脱炭素化に取り組んでまいります。
気候変動をはじめとするサステナビリティに関連する重要事項は、サステナビリティ推進委員会において審議しています。サステナビリティ推進委員会は代表取締役社長が委員長を務め、その指揮の下、気候変動に関する企画立案・管理を行い、関係部門やグループ会社と連携の上、取り組みを推進しています。サステナビリティ推進委員会で審議された気候変動に関する重要事項は、定期的にグローバル事業推進会議に報告され、グローバル事業推進会議は、気候変動に関する重要なリスクと機会等について審議・監督を行い、必要に応じて取締役会へ報告することで、全社的な経営戦略への統合を図っています。
サステナビリティ推進委員会の役割
当社では、気候変動により生じるリスクと機会の特定を行い、自社の気候変動に対するレジリエンス性の確認と考察を行っています。分析には、IPCC(※1)やIEA(※2)が公表する複数の将来予測シナリオを用い、4℃シナリオと1.5℃シナリオの2つのシナリオを設定し、それぞれの世界観における2030年時点での当社への影響を想定して定性的な分析を実施しました。
※1: IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)
※2: IEA(International Energy Agency:国際エネルギー機関)
4℃シナリオ
産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年までに気温が最大4℃上昇し、風水害をはじめとした物理的被害が拡大・激甚化することを想定した世界観
1.5℃シナリオ
カーボンニュートラルへの取り組みにより気温上昇を1.5℃程度に抑制するために、規制強化や技術革新が進むことを想定した世界観
分析結果
4℃シナリオでは、風水害などの異常気象の激甚化による直接的な被害の拡大が大きな懸念事項となります。特に当社の生産拠点である千曲川工場やインド工場における被災は、企業経営の大きなリスクになると推測されます。また、化石燃料需要の成行き的な拡大などを背景に原油価格の上昇も懸念され、原油を材料とするPETなどの樹脂価格の高騰を招き、顧客の設備投資意欲の減退につながることも想定されます。しかし、災害時の飲料水・食品等の確保の観点においてペットボトルの貢献性は確かであり、間接的ではあるものの当社ビジネスの社会貢献性も認識しています。
対して1.5℃シナリオでは、世界的な脱炭素の取り組みにより炭素税・排出権取引の導入や化石燃料由来の電力価格が高騰することが予測され、操業コストの増加が懸念されます。また、サプライチェーンではカーボンプライシングによる影響を製品やサービス価格に転嫁することで、仕入コストの増加も懸念されます。一方、企業の省エネルギー需要の拡大が、当社の主力商品である1ステップ成形機の優れた環境性能や、ゼロ・クーリングシステムをはじめとする独自技術の評価につながり、事業機会となる可能性を認識しています。
気候変動に関するリスク・機会一覧表
区分 | 2030年における影響 | ||||
---|---|---|---|---|---|
要因と事象 | 分類 | 影響度 | |||
4℃ | 1.5℃ | ||||
脱炭素化社会への移行に伴う影響 |
政策・規制 | 炭素税の導入による操業コストの増加 | リスク | 小 | 大 |
プラスチック規制のPET容器への波及 | リスク | 小 | 中 | ||
製品に関わる環境情報の開示要求の高まり | リスク/機会 | 小 | 中 | ||
技術 | 省エネ技術の普及による設備投資の増加および当社製品の環境性能向上 | リスク/機会 | 中 | 大 | |
市場 | 再エネ導入に伴う電力コストの上昇 | リスク | 中 | 大 | |
樹脂価格高騰に伴う顧客の設備投資意欲の低下 | リスク | 大 | 中 | ||
製品の環境性能向上による需要増加 | 機会 | 中 | 大 | ||
評判 | ESGレーティングにおける環境スコアの企業イメージへの影響 | リスク/機会 | 中 | 大 | |
物理的影響温暖化に伴う |
急性 | 気象災害による自社拠点の被災 | リスク | 大 | 大 |
サプライヤーの被災による原材料供給の停止 | リスク | 大 | 中 | ||
災害時の飲料水・食品等の確保を目的としたペットボトルの需要増加に伴う貢献可能性 | 機会 | 中 | 中 | ||
慢性 | 平均気温上昇による販売機器の熱対策要求の高まり | リスク/機会 | 中 | 中 |
【参考シナリオ】
【影響度評価の軸】
リスク・機会に対する当社の対応
当社では、今回のシナリオ分析で特定・評価したリスクや機会に対応する現在の取り組みとして、以下の対策を実施しています。また今後は、定量的なリスクと機会の評価を通じて影響規模の具体化から分析を深化し、気候変動に対する企業のレジリエンス性の強化を図ってまいります。
区分 | 分類 | 対応策 | |
---|---|---|---|
脱炭素化社会 | リスク低減 | 工場インフラ | CO2フリー電力の導入 工場電力の適時適量使用によるエネルギー量の削減 省エネ対応設備の導入 |
機会獲得 | 当社製品 |
環境負荷低減型製品の開発強化 ・ZC(※1)に代表されるハイサイクル化推進による消費電力の削減 ・RR(※2)ボトル市場開拓による樹脂使用量の削減 ・二層成形法によるリサイクル樹脂の使用促進 ・生分解性樹脂によるボトル成形 ※1: Zero Cooling |
|
その他 | 環境貢献の積極的な情報開示 業界団体やエコ啓発活動などのコミュニティへの参画および投資 |
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物理的影響 | リスク低減 | 工場インフラ | 拠点ごとの自然災害リスクの評価と対応 |
その他 | リスク管理規程・BCPマニュアル等の整備強化 |
当社ではリスク管理規程を定め、その規程に基づき全社的なリスク管理体制を整備しています。気候関連リスクの識別および評価はサステナビリティ推進委員会が実施し、定期的にグローバル事業推進会議へ報告しています。グローバル事業推進会議では、気候関連リスクを含む当社グループのリスク管理に関する下記の内容について審議し、識別したリスクに対して組織的かつ適切な予防策を講じています。また、グループ各社におけるリスク管理にあたっては主管部門を設置し、リスク管理の対応方針等の決定事項の伝達や、リスクの再評価およびリスク対策の再設計もしくは強化の指示を行っています。
リスク管理に関するグローバル事業推進会議での審議内容
指標 | 目標 |
---|---|
日本国内の工場からのCO2排出量(Scope1+2) | 2030年度:50%削減(2019年比) |
インド工場からのCO2排出量(Scope1+2) | 策定中 |
当社製品からのCO2排出量(Scope3カテゴリ11) | 策定中 |
当社では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、まずは「2030年までに日本国内の工場から排出されるCO2排出量を50%削減する(2019年比)」との目標を掲げ、脱炭素化に取り組んでいます。なお、当社グループにおける「工場からのCO2排出量」の内、約9割をインド工場が占めており、その削減が急務であることも認識しています。今後は、インド工場におけるCO2削減策の検討および目標設定を行い、海外拠点を含めたグループ全体での脱炭素化に取り組んでまいります。
また、当社の主力製品であるストレッチブロー成形機は、顧客企業におけるエネルギー消費によって稼働する設備機器であり、Scope3のカテゴリ11(=販売した製品の使用に伴う排出)も、当社事業において重要な指標の1つであると考えています。なお、当社製1ステップ成形機は、プリフォームの内部保有熱を無駄なく利用できるため、同業他社の2ステップ成形機に比べエネルギー効率が格段に優れています。1.5℃シナリオにおいては、環境性能の高さが独自技術の評価につながり、事業機会となることを認識していますが、今後は、Scope3のカテゴリ11も含めた評価モデルを構築し、事業活動における排出削減および環境負荷低減製品の開発による排出削減に取り組んでまいります。
(t-CO2:トンCO2)
指標 | 単位 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
CO2排出量 | t-CO2 | 17,757 | 17,923 | 22,454 | ||
国内(グループ会社含む) | t-CO2 | 2,370 | 2,020 | 1,923 | ||
Scope1 | t-CO2 | 917 | 633 | 523 | ||
Scope2 | t-CO2 | 1,453 | 1,386 | 1,400 | ||
インド | t-CO2 | 15,386 | 15,904 | 20,530 | ||
Scope1 | t-CO2 | 147 | 78 | 148 | ||
Scope2 | t-CO2 | 15,240 | 15,826 | 20,383 |
(KL:キロリットル)
指標 | 単位 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|---|
エネルギー使用量 | KL | 5,366 | 5,370 | 6,622 | |
国内(グループ会社含む) | KL | 1,179 | 1,049 | 1,039 | |
インド | KL | 4,188 | 4,321 | 5,583 |
(GJ:ギガジュール)
指標 | 単位 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
---|---|---|---|---|---|
エネルギー使用量 | GJ | 207,995 | 208,137 | 256,668 | |
国内(グループ会社含む) | GJ | 45,681 | 40,672 | 40,282 | |
インド | GJ | 162,314 | 167,465 | 216,386 |
2021年度のインドにおけるCO2排出量・エネルギー使用量の増加は、工作機械等の設備投資によるエネルギー使用量の増加によるものです。
なお、年度集計の区切りは以下のとおりです。
2021年度:日本 2021年10月~2022年9月、インド 2021年1月~2021年12月